世界の終りとハードボイルドワンダーランド(新訂版)上・下巻 /村上春樹

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終わり〕。老科学者により意識の核にある思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波乱万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。(上巻裏表紙より)

〈私〉の意識の核に思考回路を組み込んだ老博士と再会した〈私〉は、回路の秘密を聞いて愕然とする。私の知らないうちに世界は始まり、知らないうちに終わろうとしているのだ。〈私〉の行く先は永遠の生か、それとも死か?そしてまた、〔世界の終わり〕の街から〈僕〉は脱出できるのか?同時進行する二つの物語を結ぶ、意外な結末。村上春樹のメッセージが、君に届くか!?(下巻裏表紙より)

主人公は記号士と呼ばれる職業をしており「シャフリング」「ブレインウォッシュ」といった特殊な作業を行うことができる。

ある博士から隠れ研究所に呼ばれそこで作業の依頼をうけ、自宅に戻り作業を行う。

物語の後編で語られる事になるが、この時点で主人公には通常の人間がもともともっている現実世界で意思を考える「第一回路」、特殊な作業を行うために後天的に発達させられた「第二回路」、そして博士によって作られた主人公の意思をデータ化したものを再び元に戻して増設された「第三回路」を備えている。

通常は第一回路で生活しており、作業をするときは記号士の無意識化を使うため第二回路に切り替えられる。そしてまた第一回路に戻ってきて作業をした本人でも何をしていたかわからないように暗号化するといったものであった。

しかし主人公は博士から受けた依頼によるシャフリング作業によって第二回路ではなく第三回路を使用することになり、第一回路に戻ってきたものの第三回路がそのまま活動をしており、このままだと第三回路が第一回路を焼き切ってしまい第三回路の住人になってしまうと告げられる。

そしてその第三回路の世界とは時間が圧縮分割された世界であり永遠の生を享受しなければならないといったものであった。

物語は、

第一回路での現実世界=ハードボイルドワンダーランド

第三回路での仮想世界=世界の終わり

という形で交互に進行していき、徐々に徐々に両方の主人公がそれぞれの世界の存在に近づいていく。

現実世界の〈私〉は第一回路が焼き切れてしまい意思を失うまでのリミットにおわれ、

仮想世界の〈僕〉は影と切り離されてしまい、不思議な街でその世界の真実に追っていく。

最終的に〈私〉はコールドスリープされ将来意思を取り戻す手段が発見されるかもしれないという可能性を残しつつも、仮想世界の住人になることを受け入れ眠りにつく。

〈僕〉は影だけを元の世界に帰し、自分自身が作り出してしまったと気付いたその世界と共に生きることを選ぶ。

物語はここで終わる。

コールドスリープされている現実世界の〈私〉の肉体には仮想世界から帰ってきた「影=本体」が戻り肉体は無事生存保管される。

私の意思は〈僕〉となり仮想世界にとどまり、第三回路の世界で永遠の生をいきる。

もし、第三世界の「僕=意識』が影と共に現実世界に帰るという選択をしたとしても、第一回路が焼き切れている現実世界の「私」の肉体では死んでいるのと変わらない。

物語を最後まで読んでいる側からすると、一見突拍子も無い結末にも思えるが本体も意識も共に生き残れる唯一の方法を主人公達は選んだということになるのだろう。

ハードボイルドワンダーランドの主人公は仮想世界で生き続けることを選び、村上春樹の別作品である「ダンスダンスダンス」では主人公は現実世界を選んでいる。

この作品で仮想世界を選んだ主人公を、後年村上春樹は別作品で否定しているようにも感じられる。ただおそらくそれは両方の可能性を提示し、どちらにも答えを示さず曖昧模糊なまま物語を終わらせ、後は自分で好きに考えてくださいという村上春樹らしい意思表示なのだとも感じられる。

この作品を読んだことがない人にはまったく意味わからんメモになってる気がしますが、このぐらいの文章量でわかりやすく簡潔に書く文章力は私にはございません。

文庫本上下巻で900ページ近い長編でなかなか大変だとは思いますが、気になった方は是非読んでみてください。

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