ハルさん/藤野恵美

(瑠璃子さん...今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。まさか、この僕が「花嫁の父」になるなんて...)

結婚式の日、ハルさんは思い出す、娘の成長を柔らかく彩った五つの謎を。

心底困り果てたハルさんの為にいつも謎を解き明かしてくれるのは、天国にいる奥さんの瑠璃子さんだった。

(あらすじより)

人形作家の主人公ハルさんとその娘ふうちゃん。

奇抜なミステリー!というわけではない、日常で起こった父親ハルさんとしての謎について、天国の瑠璃子さんがハルさんに語り掛け謎を解決してくれます。

・消えた卵焼き事件(幼稚園)

ふうちゃんの幼稚園のお友達、隆くんのお弁当から卵焼きがなくなり隆くんからふうちゃんが盗ったと疑われます。

隆くんは卵アレルギーであり、母親に代わりお弁当を作ったおばあちゃんが卵焼きをお弁当に入れてしまった。それに気づいた母親が幼稚園の先生に気づかないうちに抜いてほしいと頼んでいたということでした。

・夏休みの失踪(小学生)

小学生のふうちゃんが突然いなくなります。そして知り合いのおじいさんの家から何かを盗んだともいわれてしまいます。

「自分に合っていない場所で生きるのは大変」というハルさんの言葉を聞き、知り合いのおじいさんが不法に生育していた寒冷植物を掘り起こし、飛行機に乗って親族がいる北海道へ一人で行ってしまうというすごい行動力をふうちゃんが見せるお話。散らかっていて見つけられなかっただけで一応書置きは残していたし、おじいさんにもちゃんと後日謝りにいっています。

飛行機に乗って「お空から見守ってくれているお母さん」に会いたかった、という一面もあったようです。

・涙の理由(中学生)

中学生になったふうちゃんの涙や、些細な状況などから「いじめられているのではないか」と考えるハルさん。

結局、親友の「ちかちゃん」が引越ししてしまうという事を悲しんでいただけでした。

・サンタが指輪を持ってくる(高校生)

アルバイトでけがをしたふうちゃん。お客さんのプレゼントを拾ったので届けてほしいとハルさんにお願いをします。

書いてあるメッセージの内容から待ち合わせ場所にてお客さんをまつハルさん。しかし、メッセージ内容の待ち合わせ場所でそこではなく、内容を読み間違えていると瑠璃子さんから語り掛けられ、無事プレゼントの指輪をお客さんに届けます。

・人形の家(大学生)

北海道の大学へ行っているふうちゃんの帰省中、ハルさんが作った12体のシリーズものの人形のうち1体がなくったと相談されます。

実際にハルさんが相談者のもとにいくと、そこには自分が作ったシリーズもの人形のうちの1体が置いてあります。相談者に確認してみると、自分がアレンジしたとおりにはなっているがこの人形は自分が可愛がっていたものではないとのこと。シリーズものの人形12体は見分けがつかないように精巧に作ってあり、シリアルナンバーなども作っていないので、ハルさんにはそれが相談者のものなのかがわからない。

相談者が大切にしている人形を破損してしまった相談者の夫が、ネットオークションで別の1体を購入しアレンジ内容を再現し何事もなかったかのようにしていたという事であった。しかし、相談者には一目で違うと見抜かれてしまっていたという内容でした。

時は現在に戻り、ふうちゃんの結婚式にてふたりが結婚に至るまでが語られていきます。

新郎の長谷さんとふうちゃんが出会ったのは飛行機の中。長谷さんが読んでいた新聞にハルさんの記事が載っているのをみつけたふうちゃんが「それ見せてください」と話しかけたことをきっかけに交際へ発展していきます。そして幼稚園・小学生・中学生・高校生・大学生とハルさんとふうちゃんが会話し、ハルさんがふうちゃんに伝えた言葉のとおりにしっかり考え、それらの言葉を踏まえたうえで長谷さんを結婚相手として選んだのだということに気づきます。

人が死なないミステリーであり親子愛を描いた作品でもあります。

読んでいる間優しい時間が流れるような感覚に包まれます。正直なところ「何がどう面白いのか説明してくれ」と言われても良い意味で私には説明ができません。読後のほっこりとした感じ・作品の雰囲気に浸りぼーっとする心地よい感覚という言い回しでなんとなく理解できる方や、興味を持った方はぜひ読んでみてください。

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