イシューからはじめよ-知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人
イシューからはじめるとやるべきことは100分の1になる。(内容説明より)
本書を簡単に解説すると、
①ほんまに今やるべき必要な事ちゃんとわかってる?
②わかってたとしてもそれを根性論で無理やり解決してません?
③念のためやり方おしえときますわ
っていうとこでしょう。
本書でいう「イシュー」とは
「白黒つけなければならない問題であって、答えが出せるもの」の事であり、答えが出せないものはどんなに重要であってもイシューではないという事です。
悩むというのは答えが出ないという前提のもとに、考えるふりをすることであり、考えるというのは答えが出るという前提のもとに建設的に考えを組み立てること。
変化を生まないとわかっている活動に時間を使うのは無駄以外のなにものでもなく、これを明確に意識しておかないと「悩む」ことを「考える」ことだと勘違いして、あっという間に貴重な時間を失ってしまいます。
また考える・行動するという局面においても根性論(本書内では「犬の道」)ではなく、相手への伝え方などの結果を意識したものでなければならない。なぜならプロフェッショナルの世界では「努力」は一切評価されないからとばっさりいかれています。
このイシューをちゃんと見極めてより良い方法で行動することによって知的生産性爆上げさせましょうというのが本書で伝えようとされている内容であり、
そもそも良い方法知っててもその土台となるイシューを見極めるって事ができてないとお話になりませんという事を著者は述べています。
個人的には、
・既知の情報とつなぎようのない情報を提供しても相手は理解の仕様がない。理解する事の本質は既知の二つ以上の情報がつながることである。
・「限られた時間で、いかに本当に価値のあるアウトプットを効率的に生み出すか」というゲームである。
というあたりがなんとなく刺さった部分でした。
また、「伝える」というポイントにおいて記されていた
「聞き手はめっちゃ賢いけど何にも知らん人」として考えろという話は、よく言われる「小学生にわかるように伝える」という内容とポイントとしては近似しているけど本質的な部分はずれているのでどちらを心がけるべきなのかは一考の価値があるところだなと感じました。
本書のはしがきで著者が最後に
「人から褒められること」ではなく、「生み出した結果」そのものが自分を支え、励ましてくれる。生み出したものの結果によって確かに変化が起き、喜んでくれる人がいることがいちばんの報酬になる。仕事がうまく進んだ時、僕が感じるのはうれしいというよりもほっとしたというものだ。自分の会社やクライアントに約束した価値を無事届けた、このこと自体が何とも言えない達成感を生む。
と実感を語っており、これについても一言一句異議なしです。
さて、
いつもどおり自分用にメモした本書の抜き書き的なものも記載しておきますので、読書・購入の検討をされている方の参考になれば幸いです。
---------------------------------------------------------------------------------------
0章「脱 犬の道」
「問題を解く」より「問題を見極める」
「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」
「知れば知るほど智恵が湧く」より「やることを削る」
「数次の桁数にこだわる」より「答えが出せるかにこだわる」
「生産性」=どれだけのインプットでどれだけのアウトプットを生み出せたかということ
「イシュー度」=自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
「解の質」=そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
絶対にやってはならないことは一心不乱に大量の仕事をこなしてイシュー度・解の質をあげようとすることである=犬の道(根性論)
1章「解く」前に「見極める」
・何に答えを出す必要があるのかという議論から始め、そのためには何を明らかにする必要があるのかという流れで分析を設計する。
①相談する相手を持つ
②仮説を立てる-理由-イシューに答えを出す
必要な情報・分析すべきことが分かる
分析結果の解釈が明確になる
③何はともあれ「言葉」にする
人間は言葉にしない限り概念をまとめることができない。
イシューと仮説を言葉で表現する際の注意点:「主語」と「動詞」を入れる(言葉はシンプルであるほど良い)
「なぜ?」より「どちら?」「何を?」「どうやって?」
④比較表現を入れる(「~はB」、ではなく「~はAではなく、むしろB」)
・良いイシューの条件
①本質的な選択肢である
なんちゃってイシューを最初の段階できちんとはじくことが大切
これがイシューだと思ったら主語を変えて確認。誰にとってという主語を変えても成立するものはイシューとしての見極めが甘い可能性が高い。
②深い仮説がある
人が何かを理解するというのは、2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見する事
1.共通性の発見
2.関係性の発見
3.グルーピングの発見
4.ルールの発見
③答えを出せる
どれほどカギとなる問いであっても、「答えを出せないもの」は良いイシューとはいえない。「答えを出せる範囲で最もインパクトのある問い」こそが意味のあるイシューとなる。そのままでは答えの出しようがなくても、分解することで答えを出せる部分が出てくればそこをイシューとして切り出す。
取り組んでいるテーマ・対象について「考えるための材料をザックリと得る」
情報収集のコツ1.一次情報に触れる(誰のフィルターも通っていない情報)現場・開発者・加工されていない生のデータ
2.基本情報をスキャンする:数次・問題意識・フレームワーク
3.集め過ぎない・知りすぎない(知識の増大は、必ずしも知恵の増大にはつながらない。むしろあるレベルを超すと負に働く)
・イシュー特定のアプローチ
①変数を削る
②視覚化する
人間は目で考える動物なので、形が見えると急速にその対象について何かが分かったと感じることが多い。
③最終系からたどる
④So what?を繰り返す
一見すると当たり前の事しかイシューの候補としてあがらないときには、So what?(だから何?)という仮説的な質問を繰り返すことが効果的。
⑤極端な事例を考える
2章 イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
解の質を高め生産性を向上させる作業「イシュー分析」
・ストーリーラインづくり
1.イシューを分解する(ダブりも漏れもなく(MECE)本質的に意味のある塊で砕く)
WHERE・WHAT・HOWという3つにイシューを分解して整理する(型がない場合は逆算する)
2.分解したイシューに基づいてストーリーラインを組み立てる
流れを持った箇条書きの文章として統合していく
ストーリーラインは進捗のたびに書き換えて磨いていくもの
漠然としたアイデアしか浮かばない場合は、主語と動詞を明確にし、いったい自分は何を言おいうとしているのかを箇条書きで明確にする「イシューと仮説だし」を日々行う
ストーリーラインの方は「WHYの並び立て(最終的に言いたいメッセージについて、理由や具体的なやり方を並列的に立てることでメッセージをサポートする)」と「空・雨・傘(西の空が晴れているから当分雨は降らないだろう。であれば今日は傘はいらない。)」
第3章 ストーリーを絵コンテにする
絵コンテづくりとは、基本的にはイシューを分解して並べたストーリーラインに沿って、必要な分析のイメージを並べていったものが絵コンテであり、これを何枚でも必要なだけ作る。
①軸の整理
分析とは比較、比べること。フェアに対象同士を比べその違いを見ること。
1.比較:何らかの共通軸で二つ以上の値を比べる
2.構成:何を全体として考えて、何を抽出した議論をするかという意味合いを考えること
3.変化:同じものを時間軸上で比較すること
分析は「原因側」と「結果側」の掛け算で表現される。比較する条件が原因側で、それを評価する値が結果側となる。
方法=比較に際しての条件をふせんなどに書き出していって、関係のある者をたばねていく
②イメージの具体化
具体的な数字を入れて分籍・検討結果のイメージを作る
意味合いを表現する:比較による結果の違いが明確に表現できている事(「差がある」「変化がある」「パターンがある」)
③方法の明示
データのとり方を明示する
第4章 実際の分析を進める
やっていることは「限られた時間で、いかに本当に価値のあるアウトプットを効率的に生み出すか」というゲーム。どれだけ価値のあるイシュー度の高い活動に絞り込み、そのアウトプットの質をどこまで高めることができるかを競うゲーム。
・いきなり分析や検証の活動を始めない(もっとも価値のあるサブイシューを見極め、そのための分析を行う。)
・答えありきではいけない(都合の良いものだけを見る「答えありき」と「イシューから始める」考え方は全く違う)
・正しくトラブルをさばく(できる限りヘッジをかけておく、できる限り前倒しで問題について考えておく。)
①欲しい数字や照明が出ない(構造化して推定する・脚で稼ぐ・複数のアプローチから推定する)
②自分知識や技ではらちが明かない(人に聞きまくること)
・軽快に答えを出す(いくつもの手法を持つ・回転率とスピードを重視する(60%を回転させる))
第5章 「伝えるもの」をまとめる
アウトプットは第一に聞き手・読み手と自分の知識ギャップを埋めるためにある
①意味のある課題を扱っていることを理解してもらう
②最終的なメッセージを理解してもらう
③メッセージに納得して、行動に移してもらう
「デルブリュックの教え」
①聞き手は完全に無知だと思え
②聞き手は高度の知性を持つと想定せよ
的確な伝え方をすれば必ず理解してくれる存在として信頼する。賢いが無知というのが基本とする受け手の想定。(めっちゃ賢いが業界未経験のド新人)
・一気に仕上げる
・ストーリーラインを磨きこむ
①論理構造を確認する
構造は結論をピラミッド型にさせる「WHYの並べ立て」「空・雨・傘」のいずれかをっているはず。
カギとなる洞察や理由はダブりも漏れもない状態である。
分析・検証の結果全体に影響が出たときには、全体のストーリー構造の見直しが必要ないか確認(仮説が崩れたら「発見だ!」と思えるぐらいがちょうどよい)
フレームワークなどがあれば図としてまとめたほうが良い
論理の構造を確認する段階でカギとなる新しい概念が出てきたら、「オリジナルの名前」をつけるとよい
②流れを磨く
優れたプレゼンテーションとは、「一つのテーマから次々とカギになるサブイシューが広がり、流れを見失うことなく志向が広がっていく」もの
リハーサルをやりながら手を入れていく
1.紙芝居形式の粗磨き
2.人を相手にした細かい仕上げ(テーマや内容を直接的に知らない、気心の知れた人がベスト。壁に説明したやつを録画でもよい。)
説明がしにくくないか・誤解を招きやすい表現がないか・わかりやすいか・きいていてひっかるところはないか
③エレベーターテストに備える
20~30秒程度で複雑なプロジェクトの概要をまとめて伝える。
・チャートを磨きこむ(メッセージ・タイトル・サポート)
優れたチャートが満たすべき条件
1.イシューに沿ったメッセージがある
2.サポート部分の縦と横の広がりに意味がある
3.サポートがメッセージを支えている
コツ①1チャート1メッセージを徹底する(どんな説明もこれ以上できないほど簡単にしろ。それでも人はわからないというものだ。そして自分が理解できなければ、それを作った人間の事を馬鹿だと思うものだ。人は決して自分の頭が悪いなんて思わない。)
コツ②タテとヨコの比較軸を磨く(メッセージを伝達するためには、必要な比較軸を全て並べることが大切。)
コツ③メッセージと分析表現を揃える