君の膵臓をたべたい/住野よる

君の膵臓をたべたい/住野よる

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」

それは、クラスメイトである山内桜良がひそかにつづっていた日記帳だった。

そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もう幾ばくも無いと書かれていて...

(商品説明より)

作者のデビュー作であり映画化・アニメ化・漫画化もされている超ヒット作品です。

なんとなくタイトルで食わず嫌いをしていたのですが、ちょっとした機会があり読んでみました。

物語の終盤かなり引き込まれる作りになっており、内容的に普段小説を読まない人でも「日常的に漫画は読む」程度に本を読む習慣がある人であれば十分読み進め楽しめると思います。

個人的にこの作者の文体に惹きつけられてしまい、ほかにも数点著者の作品を急遽注文する程度に気に入ってしまいました。

目次などで章立てしていないつくりかたや、

物語の終盤まで出てこない主人公の名前やなぜかあかされないこまごまとした内容などが、最終的に回収され腑に落ちる感覚がとても心地よかったです。

では以下内容についてがっつりネタバレこみで書いてますので、ご注意ください。

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無口で人と関わることを好まない主人公、趣味は読書

天真爛漫でクラスの人気者であり誰からも好かれるヒロインの山内桜良(さくら)

主人公はある日、病院で「共病文庫」と書かれた本を拾う。

なんとなしに1ページを目を見てみるとそれは本ではなく日記のようであり、膵臓の病気でもうすぐ死ぬといった内容の記載があった。

声をかけられた主人公が顔を上げるとクラスメイトの山内桜良がいた。

彼女はその日記が自分のものであること、内容が真実であること、家族以外には内緒であることを告げケラケラと笑いながら何事もない様子で病院をあとにしていった。

翌日さくらは主人公と同じ図書委員に立候補し、主人公につきまとうようになる。

死ぬまでにしたいことリストをかなえたいと陰キャの主人公を焼肉、スイーツバイキングへと連れ出すさくら。

初恋の人は何にでも「さん」をつけて呼ぶ娘であったこと、

さくらは今まで3人彼氏がおり最近別れたばかりであることなどと会話をしていると、

さくらと急に近づいた主人公に対して敵意をむき出しにしているさくらの親友恭子と出会う。

隣県でおこった通り魔殺人事件ではなくさくらと主人公がデートまがいのことをしていることがクラス中の話題になっている。

なにかヒソヒソと噂されたりと居心地悪く感じる主人公だが、いつでもフラットに接してくれるクラスメイトが一人いる。彼はいつも主人公にガムを勧めてくる。

テストが終わりまたもやさくらに連れ出される主人公。

なぜか新幹線に乗り1泊2日だと告げられ驚く。

駅に着くとラーメンの匂いがする街であること、学問の神様の神社にお参りにいく等の描写があることからおそらく「福岡県」だと思われる。

なんだかんだ楽しんだ主人公はさくらにつれられ予約済みの宿泊施設へ。

おそろしく豪華な外観のホテルであることにおどろきながらもチェックイン手続きをするさくらを眺めていると、ホテルの受付がどうやら謝罪をしておりさくらも少し困った顔をしていた。

もどってきたさくらからホテルの手違いで予約した部屋が埋まってしまっていたこと、お詫びとして当日空いていた最上級の部屋を用意してくれたこと、そして、主人公とさくらで一室の同室だと告げられまた驚く。

さくらが風呂に入り自分のリュックから洗顔を取って欲しいと頼む。

リュックの中で大量の薬、注射器、検査機などをみてしまいさくらは本当に死ぬのだとあらためて理解する主人公。

風呂から上がりお酒を飲みながら「真実か挑戦」ゲームをしようと提案するさくら。

トランプのハイ&ローで負けた方が、真実か挑戦を選ぶ。

真実なら勝者の質問に答え、挑戦なら言うことを聞く。

勝負は10回。とにかく早く終わらせたい主人公は無難な質問をし続け、「これは面接か?」とさくらに文句を言われる。

さくらの質問は合計3回。

「クラスで君が可愛いと思う人は?」という問いに対して数学の得意な子と答える。そしてさくらは3番目であると。

「わたしの可愛いと思うところを3つあげるorベッドまで運んで」といわれ主人公は答えられずにさくらをお姫様抱っこでベッドまで運ぶ。

最後の質問で「わたしが本当は死ぬのがすごく怖いといったどうする?」と問われ、質問には答えずに挑戦を選択する主人公に対し、さくらはじゃあ「同じベッドで寝ること」と指示し二人は同じベッドで寝ることに。

翌朝さくらの携帯に親友の恭子から怒りの電話がかかってくる。

私と旅行だと親に嘘をついて何をしているのか?という恭子に対しいつか全て教えるから赦して欲しいと告げ主人公と一緒にいることを伝えると、さくらのことは許した恭子だが主人公に対してますます怒りを募らすことになった。

旅行を終えて学校にいくとさくらと主人公が旅行をしていたことがクラスに漏れており、主人公の大切に使っている本のしおりや上履きがなくなるといったことが発生する。いつものクラスメイトがトイレのゴミ箱に上履きが捨ててあったことを教えてくれる。そしてやはりガムを勧めてきた。

なぜか「星の王子さま」を借りることになり、さくらの家に行く主人公。

さくらは死ぬまでにしたいことリストとして「恋人でない男の子と、いけいことをする」を挙げ、主人公にハグをする。

沈黙の後冗談だとしてテンションを上げ恥ずかしさを誤魔化すさくらの悪ふざけに怒りを覚えた主人公はさくらを押し倒す。涙を流すさくらを見て怒りが消え失せた主人公はさくらの家を後にする。

帰り道主人公はクラスメイトに声をかけられる。

明らかな不愉快さを感じ、さくらに執着していることが見受けられたクラスメイトにたいし主人公はさくらがしつこい人が嫌いであること、前の彼氏がそうだったらしいと嫌味を言うと相手は怒り狂い主人公を殴り飛ばした。

主人公のなくした本のしおりをたたきつけたクラスメイトはいまだに怒りがおさまらないようすだが、その場面を主人公を追って家を出ていたさくらが目撃する。

さくらはタカヒロというその元カレに二度と近づくなと言い渡し、主人公を連れて家に戻り雨で濡れてしまった主人公に兄の洋服を貸す。

二人はお互い謝って仲直りした上で、主人公はさくらに「病院で偶然出会ったに過ぎない自分ではなく、さくらのことを本気で思ってくれる人と一緒にいたほうがいい」と言うが「無数の選択を重ね、自分たちの意思で出会ったのだと」さくらに言われ改めてさくらが死ぬまで仲良しでいることを誓った。

さくらが入院したことを知った主人公はお見舞いに行く。補習内容をさくらに伝え帰ろうとするところで恭子と遭遇。主人公が借りている兄の服についてさくらに告げられ、恭子に怒られる前に逃げるようにして立ち去った。

そんな中クラスでは主人公がさくらのストーカーだという噂が流れだす。

次のお見舞いの時にさくらにその話をすると、「みんなともっと仲良くしなさい。そうすればお互いの人間性がわかり誤解も解けるよ」と言われる。

ある日のお見舞いで元気なさくらだが何か違和感があることに気づく。

さくらはどうしても訊きたいことがあるがその勇気がないから「真実か挑戦」ゲームをしたいと告げゲームをするが主人公が勝利。

主人公は考えた結果「生きるって、どういうこと?」とさくらに尋ねる。さくらはそれにたいし「人と人が繋がっていること」だと答えた。

帰り間際主人公に抱きつくさくら。何もないとはぐらかすさくら。そしてまた絶妙なタイミングで現れた恭子の評価が下がった。

桜の入院が二週間延長され、本気で心配した主人公はさくらに「生きて欲しいと」心からの本心を伝えると、自分が必要とされていることを喜ぶさくらと冗談のように抱き合い、遺書の下書きを始めたことを伝えられる。

さくらが無事に退院し会う約束をした主人公は待ち合わせのカフェでまっている。

待っている間のメールのやり取りの中で、「君になりたかった」「君に憧れている」ということを伝えようとして「君の爪の垢を煎じて飲みたい」という文章を却下し、推敲の末思いついた言葉をメールで送信する。

「君の膵臓を食べたい」と

会心の出来栄えに満足する主人公だが、そのメールに対するさくらからの返信がこない。

その後待ち合わせから4時間が経ってもさくらはあらわれず返信もないことで主人公は自宅に帰るがそこでつぎのニュースを知る。

「高校生の山内桜良さんが住宅街の路地で倒れているところを発見されたが、救急搬送先の病院で死亡が確認された。通り魔による刺殺事件で、犯人はすぐに逮捕されている」

お通夜や葬儀に参加することもできず10日間部屋にこもっていた主人公は不意に「共病文庫」のことを思い出す。

山内家に行き母親に対して通夜や葬儀に参加できなかったことを謝罪し、お参りをさせてもらい自分がさくらの病気のことをしっていたこと、共病文庫という日記を見せて欲しいということを告げる。母親はさくらから病気のことを知っている人がいること、その人は恥ずかしがりで葬儀には参加してくれないかもしれないがかならず共病文庫を取りに来るから渡して欲しいと言われていたと告げられ、主人公のおかげでさくらは幸せだったと逆に感謝を伝えられた。

共病文庫の中には中学生の頃からの独白が書いてあり、自分の思い出とリンクする内容が書いてあるものの、自分を共病文庫に登場させないでくれとお願いしていたせいで、自分のことを結局さくらがどう思っていたのか共病文庫の内容からはわからなかった。

さくらの母親にうながされ最終日付のページから先へと進むと、下書きのままの遺書が書かれていた。

家族や親友恭子への謝罪と感謝、そして主人公へのメッセージだった。

共病文庫は主人公の好きに処理してほしいということ、自分と正反対だと感じ興味をもった主人公からたくさんのものをもらっていたこと。そして恋のような感情も感じたがそんなありふれた言葉で呼びたくなかったこと。

入院中の真実か挑戦ゲームで自分が聞きたかったのは「なぜ君は私を名前で呼ばないの?」ということであったこと。

主人公が自分を嫌っているから名前で呼ばないのかと考えていたが、名前で呼ぶことによってそこに意味がつくことを怖がっていたのだろうと気づいたこと、いずれ失う自分を友達や恋人にすることを恐れたのではないかということ。

しかしそれは臆病などではなく主人公が一人でやっていけるという強さであり、それに憧れ、自分もそうなりたいと願っていたことを伝えるために思いついた「君の爪の垢を煎じて飲みたい」という言葉を訂正し、そんなありふれた言葉で自分たちの関係性をあらわしたくないとして

「君の膵臓を食べたい」と書いてあった。

共病文庫を読み終えた主人公は、さくらの母親からさくらの携帯を見せてもらう。そこには自分が最後に送ったメール「君の膵臓を食べたい」が開封済みとなっていた。

メールがちゃんと届き、さくらの目に触れており、同じことを考え同じ言葉を相手に送っていたと言うことが伝わっていたという事実が引き金となり、さくらが死んでから初めて声を上げて泣いた。

さくらの母親といつか恭子も交えて食事をすることを約束し、主人公は自分の名前が「志賀春樹」であることを告げた。

その後恭子と連絡を取り共病文庫をみせる。恭子はさくらの思いを知り、なぜ自分に病気のことを教えなかったのかと春樹に怒りを向ける。

そのことについて謝罪をし、許して欲しいこと、そして自分と友達になって欲しいことを伝える。それがさくらの願いだったからだ。

恭子は返事もせずその場を立ち去ってしまうが、少しずつ友達として距離を縮め、一年後二人でさくらのお墓まいりに行く。

共病文庫で様々なネタバラシをしてくれたお返しに自分のネタバラシしなければと感じ、さくらの墓前で何にでも「さん」づけする初恋の人の話は嘘だと告げる。本当の初恋の人ができたら、その子の膵臓を食べてもいいかもといい、初恋がさくらであることも明かした。

墓参りを終えると、さくらの母親との約束を果たすために、春樹と恭子でさくらの家族との食事に向かうのであった。

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