遺された家族の為にできる手続き/パターン③

 遺された家族の為にできる手続き編ラストのパターン③「妻を受託者として信託契約を締結する」についてです。

 いわゆる数年前ぐらいからよく聞くようになった「家族信託」という手続きです。

 「子のいない夫婦で夫が亡くなった場合に全財産を簡単な手続きで妻に渡したい」という時の具体例としては、

 委託者:夫

 受託者:妻

 受益者:夫

 対象財産:不動産、預貯金等

と設定し、信託終了時(死亡時等)の残余財産は受託者に帰属させるとしておけば遺言書を残しておいたときのように財産の帰属先を指定することができます。

 メリットとしていえば、例えば委託者である夫が信託契約締結後に認知症やアルツハイマー等になった場合通常は預貯金や不動産等の資産の管理・処分を行うことが困難になるのですが、信託契約を結んでいれば管理・処分権限は受託者である妻にあるので財産の凍結を防ぐことができ、必要な運用や処分による資金確保などが可能となります。また財産の承継先を先の先まで指定することが可能なので、「残余財産は妻に帰属する。妻が亡くなった場合は妻の姪である○○に帰属させる。」といったことも可能です。(妻の法定相続人になる予定のものに渡したくないときなど)

 デメリットは委託者である夫自身に管理・処分の権限がなくなるので自由に財産を動かすことができなくなること、信託契約自体が複雑な手続きになることが多いので他の手続きに比べて専門家報酬等で費用が高額になることが多いことなどが考えられます。

 前提条件としての「子のいない夫婦で夫が亡くなった場合に全財産を簡単な手続きで妻に渡したい」という場合であれば、正直このパターン③は費用や手続きの複雑さなどの面を考慮するとむいていないとは感じます。自分が認知症になってしまって財産が凍結した結果、介護費用の捻出に子供たちが困らないように管理権限を次の世代に預けておくというイメージが強い制度です。

 「相続税対策に良い」などといった謳い文句に飛びつかず、自身が望んでいることは他の制度で代替可能ではないかといった事を含めしっかりと専門家と相談したうえで、それでもこの制度が必要であると思えるのであれば手続きをすすめるといった慎重さも大切です。

 司法書士としてもちろん私がご相談に乗ることも可能ですし、「民事信託士」といった専門の資格者をご紹介する事も可能ですのでお問い合わせよりご連絡下さい。

 さてこれでパターン①~③の簡単なお話は終了となります。

 個人的な見解としては「子のいない夫婦で夫が亡くなった場合に全財産を簡単な手続きで妻に渡したい」といった時には、パターン①に記載した「法務局保管自筆証書遺言」がよいだろうと考えています。しかし、それぞれの状況や資産内容などちょっとした事で手続きの向き不向きは変わります。ですので、パターン①~③+「何もしない」等といった他の選択肢も踏まえ、これまでの記事がご自身の事やご家族の今後のことを考える機会になれば幸いです。

 

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